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小さな木製の机、そしてその上にあるノートパソコン。
隣には今ではあまり見かけなくなった黒い電話。
DEADMANは、椅子に座ったまま、思案にふけっていた。


__________転職でもしようか・・・


最初は善意ではじめた仕事だった。
傷ついた誰かのために。苦しむ誰かの身代わりになるために。
痛みを快楽と感じる彼にとって、それは趣味と実益を兼ねた仕事だった。

黒電話から聞こえる依頼者たちの声は、いつだって悲壮感が漂い
苦しんでいるように聞こえた。
それを救っているといえばおこがましいかもしれない。
ただ、救うための努力を、彼は行ってきた。


仕事内容はいつも変わらない。
ただ、依頼者の思考が変わってきていた。
彼の仕事は、依頼者の代わりに自殺をする自殺代行。
それが今では、見世物のようになってしまった。
身代わりではなく、ショー、エンターテイメント。

本気で死にたいんじゃない。
彼が死ぬ姿を見たいだけだ。


「早く死ねよ、このたまごやろう」
そう罵倒されたこともある。
「お前の黄身がみたいんだよ、キミィィィィィィィ!」
今思えば、あの依頼者はどこか、おかしかったのだろう。


__________どこで歯車が狂ったのだろう?


きっといつかの依頼者が面白おかしく吹聴したのだろう。
彼はピエロに、成り下がってしまった。


彼はゆっくりとドアを開け、外に出た。
彼の住む場所の裏手には、霊園がある。
だから、家賃が安い。それはここだけの秘密。
彼は、その霊園の隅にある墓の前に座ると、静かに掌を合わせる。


__________見世物でも、いいか。本当に困ってる人もいるんだ。


彼は、誰かに、そっと尋ねる。


__________だよね?


穏やかな気持ちが、心に流れ込んでくる。
そう遠くない場所で、電話のベルの音が響く。
座っている彼にも、かすかにその音が聞こえた。


__________ウチの電話だ!行きます、すぐイキます。


さっきまでの不満は、消えていた。
彼は立ち上がると、自宅まで勢いよく走り出していく。
電話が切れないことを、祈りながら。


今日も彼は、どこかで血を流している。
それは自分のため。そして、きっと誰かのため。
大きな口で、笑顔を浮かべながら。



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