Short Story…





Short Story No 01
殺人計画




嫌いで、嫌いで、殺したいくらい憎んでた。
この世で一番目障りで、離れられない存在。

誰だって一人はいるだろ?
生理的に嫌いだとか、顔が嫌いなんて外見的な要素もあれば、
性格が嫌い、仕種、癖、振る舞いが嫌いなんてのもある。

理由は何でも良い。
人が人を嫌いになるのに理由なんていらない。
俺はそう思ってる。

俺はアイツの全てが嫌いだった。物心ついた頃から気にいらなかった。
殴った事も、怪我させた事も何度もある。
俺の「しつけ」はエスカレートし続け机に頭をぶつけさせ、額を五針縫わせた。
腕を折ってやった事もある。あの時ばかりは、血まみれの顔して
無様な汚い顔を晒して泣いてたな。

今思い出しても笑える。

でもすぐに、アイツは一重の細い目で俺を睨んだ。
その度にムカついて、その度に「しつけ」を繰り返した。
何度も何度も何度も。

嫌いで、嫌いで、殺したいくらい憎んでた。
うじうじした所、太っている所、油っぽい肌、ニキビだらけの顔
不細工に生えている眉毛、糸のような一重の目、
頭がよかったのだけが救いだよな。
だがそれが裏目にでた。
理屈っぽく否定的で生意気な態度は、ますます俺を苛立たせた。
妙にに甲高く、蚊の鳴くような小さい声。
外見、内面、アイツの全てが嫌いだ。
顔を見るだけで虫唾が走る。
嫌いな所をあげればきりがない。

学校でも当然、皆に嫌われていたな。
教科書を破られたり、蹴られたり、荷物を隠されたり、無視されたり
でもアイツは反抗する事すらしない。
へらへら笑って、破れた教科書を持って授業を受けてた。
馬鹿じゃねぇのか?いや、馬鹿なんだろう。
彼女なんて出来るわけもない。
相談する相手もいない。
話す相手すらいない。

いや一人いたな。
アイツは、弟だけとは仲がよかった。
いつも一緒だったな。惨めだよな、可哀想だよな。
他に友達もいなかっただろうし、仕方ねぇか。
意味ねぇだろ?こんな奴生きてても仕方ないだろ。

嫌いで、嫌いで、殺したいくらい憎んでた。

殺してやる。決めた。決めたよ。今から殺す。
もういいい。どうなっても。
未来に、将来に未練なんてない。

さて、どうやって殺すか?
飛び降りでもさせよう。
そうだな、そうしよう。

息を飲む。深呼吸をし、前を見つめる。
エレベーターで上った先、俺が今いる場所はマンションの屋上。
この場所に固執してるわけじゃない。高ければ別に、どこだってよかった。

俺は、太った体を揺らし、一重の瞼を瞑ると
マンションの屋上から飛び降りる為、柵を越え、虚空へと一歩踏み出す。
17年間、ずっと嫌悪し続けてた、自分自身を殺す為に。




back