Short Story…





Short Story No 08
取り立て




アイツの家の前に着くと、ニットキャップを更に深く被り
何度も、インターフォンを鳴らした。
出てくる気配はない。

居留守に違いない。
いるのはわかっている。
さっきまで電気がついていたから。
ふざけるなと何度も、ドアを蹴った。
そして、それを、毎日続けた。

2ヶ月程度続けたが、馬鹿らしくなってやめた。
もしかしたら、どこか別の所に隠れてるかも知れないから。

しばらくして、俺の家にアイツの両親が訪ねてきた。
何のようだと訝しげに思ったが、ドアを開け、話を聞いた。

アイツは死んだらしい。
自殺したって話だった。

毎日誰かに追い詰められ、ノイローゼのようになっていた。
ノートにそう書かれていたらしい。自殺の理由も。
赤く目を晴らしたアイツの両親は、ありがとうございましたと俺に茶色の封筒を渡した。
きっと貸した金だろう。

まだ、訪ねなければいけないところがありますからと、アイツの両親は
足早に帰って行った。

封筒を開けてみる。
貸した金に気持ち程度の利子を加えられた金がそこにあった。
俺は、静かな部屋の中で、にんまりと笑う。

何だか安心した。ようやく金が返ってきたんだから。
葬式には行かない。
せっかく貸した金が返ってきたっていうのに、
香典代がもったいないだろ?




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