Short Story…





Short Story No 34
痒み



「この前、事故に遭ったんだ。
目が覚めると、暗闇。
どのくらい眠っていたのかわからないし、何時かもわからない。
挙句、ここがどこかすらわからない。
おまけに、記憶もはっきりしない。

ただ、ベッドみたいな所で寝かされてて、
起きようとしても、起き上がることすらできなかった。

左目に眼帯か何かをつけられて、視界は右側だけ、
左腕は天井から吊るされていて、金属みたいなものが腕から生えてる感じ。
それ見た時、なんとなくやばいなとは思ってた。

で、事故に遭ったことを思い出した。
突然トラックが、対向車線からはみ出してきて、俺の車と正面衝突したんだ。
で、俺は頭を打ったらしく、そこから記憶がない。
ただ、熱かった。そんなおぼろげな感覚しかない。

胸に、変な鈍痛が続いてるし、腰もひどく痛む。
左半身の手足顔がずっと痺れ、動かない。
ぞっとしたよ。
もう動かないんじゃないのかって。

叫びそうになるのをこらえて、顔をくしゃくしゃに動かした。
なんとなく動いてる気がしなくはないけど、多分動いてない。

そのうちに右目が痒くなってきた。掻きたいんだが腕が動かない。
その痒みは、右の肩、太もも、足の裏にも伝染していった、
目を覚ましてしばらく経ったから、感覚が戻ってきたんだろうって、そう思った。
右腕はほとんど動かせないけど、指だけは動いた。
その指で太ももを掻いた。
右腕はあがらない。だから肩までは届かない。
仕方なく、顔を動かし顎で肩を擦ったんだ。

そして、右の足の裏を左足の指で掻こうとして気がついた。
左脚も動かないんだった。

仕方なく、右の足裏を左に動かす。そしてまた、気がついた。
左脚が、無いってことに。




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