Short Story…





Short Story No 35
シャンプー



髪を洗っているときに感じる違和感。
ここ最近、いつも背後に誰かいるような気配。
そして、視線を感じる。

何人かの友達に相談しても
「最近疲れてるんだよ。季節の変わり目だし」
「彼氏と別れたから、そんな変な想像するんじゃないの?」
そんな気休め程度の返答しかもらえない。

誰も、わかってない。
誰も、わかってくれない。

口ではうまく説明できないけど、何かがいる。
確かにいるのに。

髪を洗う回数が減った。
お風呂に入る回数も。
お風呂には二日に一度、髪を洗うのは、四日に一度。
それでも、違和感は薄らぐだけで、未だ消えてはくれない。

今日は、髪を洗う日だ。

蛇口を捻り、シャワーを浴びる。
体が温まったところでシャワーを止め、手にシャンプーをとり、
泡立ててから髪につける。
シャンプーが終われば、次はコンディショナー。
それが憂鬱で仕方なかった。

四日目だから髪につけたシャンプーの泡も少ない。
きっと汗や皮脂で、髪が汚れているせいだ。
手にシャンプーを何度もとり、髪につける。
ようやく、沢山の白い泡が立った。
指で頭皮を擦り、蛇口を捻り、またシャワーを浴びる。

この瞬間が、いつも怖い。

急いでシャンプーを洗い流そうと懸命に指で頭皮を擦り、髪をさする。
耳には勢いのいいシャワーが流れる音が聞こえる。
また今日も、気配を感じる。
何か金属音がしたような気も。
早く洗い流そうとしたためか、耳に水が入って気持ち悪い。
それでも急いで髪を洗い流す。

急に冷気を感じた。
恐る恐る、背後を覗く。

そこに、

いた。

元彼が。

血走った目で、

いた。

手元が、光っていた。

鈍く、光っていた。




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