Short Story…





Short Story No 49
猫と南瓜



昔から本を読むのが好きだった。

静かで、車の通りもあまりない、小さな町。
縁側に座り、日の光を浴びる。
庭の土の匂いや、畳のかすかな香りを感じ、
暑くなれば、本を閉じ、日陰に入る。
冷蔵庫から何か飲み、また本を読みはじめる。
今でも、その習慣は続いている。
昔と違うのは、猫や、犬の鳴き声が聞こえなくなったことと、
一人で暮らしているということ。

いつだったか、たしか小学生くらいの時に読んだ昔話の本。
題名は忘れた。
確か、猫と南瓜とかそんなタイトル。

男が化け猫を殺して、庭に埋める。
しばらくすると、その庭にカボチャが生えてくる。
皆はそれを喜んで食べるんだけど、急に苦しみだす。
男は不審に思い、南瓜が生えてた庭を掘り返すと。
死んだ猫の口から南瓜が生えていた。
恐ろしきは、化け猫の復讐って、そんな話。

いや、その南瓜は、毒入りだったか?。
南瓜を割ったら、猫の頭部が出てきたんだったか?
記憶力なんて曖昧なものだと思う。
挿絵が気持ち悪かったのだけは、ぼんやりと覚えてはいるんだけど。

昔話だから当然なんだろうけど、不思議な話だと思う。
でも、今になって振り返れば、全て嘘で片付けられる。
紛い物、ホラ話。
いや、子供向けに作られた民話。
娯楽の少ない時代背景を考えれば、色々な話が生まれ、
伝わるのは当然だろう。

そうは言っても、信じる方にしてはたまらない。
少しだけ、信じてたから。

今は当然、信じてはいない。
骸骨の口から、何かが生えてくるなんてありえない話だ。
現に、うちの庭には、カボチャはおろか、植物だって生えやしない。
猫や犬、そして、弟が埋まってるのに。




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