Short Story…





Short Story No 55




出会ったのはいつだっただろう。
もう何年も、昔。

アイツは僕にとって、親友。そしてヒーロー。
二人でどんなことだって話した。
陰では、憧れていた。
強く、逞しく、どんな困難にも挫けない行動力に。

辛い時も、悩んでいる時も、いつだって相談に乗ってくれた。
僕が奴から脅されている時、どうしたら良いか
知恵を出してくれた。

相談に乗るだけじゃなく、力を貸してくれた。
きっかけをくれた。

たくましい腕、胸元。
本当に頼りになる存在だと思う。

アイツがいなかったら、今でもきっと、
奴に脅されていただろう。
下手したら自殺していたかもしれない。
そのくらい、追い詰められていた。
金を毟られていた。

色々な道具も貸してくれた。
アイツは物を大事にするほうなのに、
困った時はお互い様だと、
快く自分の仕事に使う大事な道具を貸してくれた。
美しく綺麗で、よく手入れされている道具。

道具を貸してくれるだけじゃなく
一緒に、いてくれた。
一緒に、戦ってくれた。

僕が脅されている時、奴を後ろから羽交い絞めにしてくれた。
その姿が僕に、勇気をくれた。
立ち向かう勇気をくれた。

奴を説得することはできなかったけど、
お陰で、縁を切ることができた。
自分だけじゃ、うまくいかなかったはず。
怖くて仕方なかったはず。

手を切ることができて、僕は、本当に安心した。

足や、首は、手よりも、上手に切れた。
本当に、安心した。



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