Short Story…





Short Story No 94
エレベ−ター



エレベーターは、嫌いだ。

あの狭い密閉された空間は、息が詰まりそうになる。
だから、自分の部屋は、12階だというのに、いつも階段を使う。
体力は、ないほうだと思う。
いつだって上りきる頃には肩で息をし、心拍数が上がる。
それでも、エレベーターに乗るよりは、マシだ。

危険な乗り物だと思うし、色々な事例もある。

停電で、閉じ込められる場合もあれば、
首を挟まれて死亡した事故、圧死した事故、
急上昇し天井叩きつけられ死亡した事故もある。

事故だけじゃない。
途中の階で待ち伏せされ襲われた事件も、
降りた瞬間に金品を奪われた事件も、エレベーター内で殺害された事件もある。

外が見えるエレベーターだって例外じゃない。
もし、12階からエレベーターに乗り、1階を押し、1階に到着する寸前、
扉一枚挟んだ目の前に、ナイフを持った男が立っているのが見えたら?


扉は、必ず、一度開く。
見える分だけ、恐怖が増すだけだ。


エレベーター独自のあの感覚も嫌いだ。
胸に、圧迫感を感じ、手にじっとりと汗をかく。
どうしても乗らなければいけない時は、無意識に、息を止めてしまう。

別に、閉所恐怖症ってわけではなく、車も、電車も、飛行機も平気だ。
ただ、エレベーターだけが、苦手。
百貨店や、ビル、タワー、どこのエレベーターでもそう。
マンションのエレベーターは特に嫌いだ。

あの役立たずの監視カメラも、上下する時の感覚も、
香水や煙草の臭いも、唾やガムや紙屑みたいなゴミの類を見るのも、
降りる時、他の住民に会うのも、気を遣うのも、
見ず知らずの他人と2人きりになるのも、嫌だ。

なによりも、降りる時に、刺されるのは、
もう、嫌だ。



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