Short Story…





Short Story No 96
注意力



注意力散漫な人間は、きっと損をする。
僕は、そう、思ってる。

色々な人間がいる。

ウォークマンや、ipodで音楽を聴きながら、歩く。
周りの雑音をシャットアウトするためか、自分だけの世界を作るためか?
携帯で、インターネットやメールをしながら、歩く。
新しい情報を求めてるのか、自分と同じような意見を、探すためか?
小説や雑誌を読みながら、歩く。
時間がないのか、それとも続きが気になるのか?
ファーストフードを食べながら、歩く。
腹が減ってるのか、食べる時間が惜しいのか?

皆が皆、注意力散漫だとは言わない。
世の中には、何かをしながら、別のことが出来る人間も沢山いる。


でも、そんな人間ばかりじゃ、ない。


皆、周りが見えているんだろうか?

道路に出れば、交差点があり、交差点には、信号機がある。
今、前の信号機は、赤。
いたって普通の歩行者用の信号機。
ただ、なかなか緑に、変わってくれない。

隣には、手帳を見てる中年の男、
その隣には自転車に乗っている少年、
その隣には、ブランドの紙袋を持った女。

しばらくして、ようやく右の車両用の信号が、
青から、黄色に変わる。
それを確認し、僕は、ゆっくり1歩。
隣にいた中年の男も、前に向かって歩き出し、そして車に撥ねられた。
歩行者用の信号機は、赤。
車両用の信号機は、まだ、黄色だった。

僕は、歩くふりをしただけ。

悪いのは、注意力がなかった中年の男と、
携帯で話しながら運転し、その男を撥ねた女だ。



back