Short Story…





Short Story No 103
避難所



少し前、少女への犯罪が、ニュースのトップを飾った。
億の人間が暮らすこの国だ。
色々な性癖があるだろう。
僕は、少女嗜好ではないけど、普通に嗜好や性癖はある。
きっと、誰だってそう。それは突き詰めれば、
髪が長いか短いか、スカートかパンツか、一重か二重か。
そんな些細なものなんだろう。

別に、誰も傷つけないなら、迷惑をかけないなら、
特に非難されることも後ろ指をさされることもないだろう。
しかし、どうしても、自己の欲求を満たすために、
誰かを犠牲にする輩がいる。

覗き、声をかけ、つきまとい、時にさらい、
証拠を隠すため、口を塞ぎ、首を絞める。


どうすればいい?


僕の住む家の前には、小学校がある。
毎日、多くの小学生達が登下校し、活発な話し声が聞こえる。
また、その時間帯でなくとも、グラウンドからの、
にぎやかな笑い声が絶えない。

明るくあどけない笑顔は、本当に美しい。
きっと、若さが輝いているのだろう。
その子供達を守るために、地域ボランティアが、
黄色の旗を持ち、登下校の子供達を見守っている。

僕は、そのボランティアには加わっていないが、
家の門には、子供110番の旗を立てている。
子供達が、身の危険や不安を感じた時に、
すぐ、駆け込むことのできる、緊急の避難所の目印として。

ここは、避難所。
だけど避難所とは、逆の場所になる可能性があることを、
子供達は、知らない。

焦ってる子供達に、わかるはずがない。
僕の前科も、性癖も、わかるはずが、ない。

僕は、2階に上がる。
ここからは、小学校のプールが覗けるから。
少女とは違い、少年の華奢で、力強い肉体は美しい。

本当に、美しい。




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