Short Story…





Short Story No 115
後悔



今日から1人暮らしをすることになった。
だけど僕は、変わらない。
3LDKのこの部屋に、ずっとひきこもっている。

昨日は暑い日だった。
きっと今日も暑いんだろう。
外の気温は、何度くらいなんだろう。
この部屋から出ないから、わからない。
もう、でなくてもいいんだ。
1人暮らしだから。

僕は、夏が大嫌いだ。
太っているからかもしれない。
額にへばりつく髪も、流れる汗も、大嫌いだ。
照りつける太陽も、ぬるすぎる風も、消えてなくなればいいと思った。
泳ぐのも嫌いだ。
裸にならないといけないから。
僕は、海に行ったこともなければ、誘われたこともない。

学校では、この体型のせいで、いつもバカにされた。
家に帰れば帰ったで、母親が何かにつけて、僕に小言や文句を言う。
僕の家は母子家庭の2人暮しだったから、その小言を止めてくれる誰かはいない。
僕のことなんて何もわかってない。
勉強、卒業、進路、毎日毎日くどくどとヒステリックで、
いつもうるさかった。
典型的な、馬鹿の見本だ。

将来のことなんて考えたくない。
未来になんて、何の希望も抱けない。
今が続いてくれればいい。
今日が永遠なら、どんなにいいだろう。

学校にはもう、行かない。
毎日が苦痛だったし、いつも誰かに何かを命令され、
暴力を受けるだけの場所に、何の希望がある?

昨日とは違い、この部屋は涼しい。
エアコンの温度は一番低く設定しているから、むしろ寒いくらいだ。

昨日まではエアコンの使いすぎを注意されたけど、
1人の今は、もう、誰からも文句を言われずにすむ。

寒い部屋、毛布、パソコン。
これだけあれば、快適に過ごせる。
腹が減ったら、適当にスナックや、レトルトや、インスタント食品を食べればいい。
まだ腐るほどある。

自由。
僕は、今、自由だ。

僕はパソコンを起動させ、ゲームにログインする。
大分レベルも上がった。そろそろ新しい武器もほしいところだ。
これからは誰に注意されることもなく、毎日フルでゲームができる。
それを考えると、嬉しくて仕方ない。

ゲームが始まると、トイレにいく暇もない。
今のうちに行っておこう。
ついでに、何かスナックでも持ってくれば、完璧だ。
僕は、母の死体をまたいで、コーラとスナックを取りにリビングに向かう。

後悔はしてない。
もっと早く殺しておけばって後悔は、あるけど。
そしたら、レベルも、もっと上がってただろうしさ。



back