Short Story…





Short Story No 139
電子の恋



僕らは、恋をする。
電子の世界で、恋をする。

絵文字や顔文字を組み合わせ、
ハートなんかは、ありったけ。
時間なんて関係ない。メールを出せば、すぐに返事がくる。
メールが来れば、すぐに返信。
そういうルール、それが当然。

もしも、返事が来なければ、別の相手を探すだけ。
他の相手を、探すだけ。

そしてちょっと仲良くなれば、
写メ交換して、電話して。

そして僕らは、恋をする。
見知らぬ誰かと、恋をする。
そして僕らは、付き合って、想いを募らせ、愛を語る。

まだ会ったことはないけれど、
僕らはちゃんと付き合っている。
周りだって、祝福してくれてる。

きっと君は、最高の恋人。
今でも続く、この最高の付き合い。

でも、一つだけ困ったことがある。
別人の写メを送ってしまったこと。
会おうって言われたら、どうしよう。
会って嫌われたら、どうしよう。

まぁ、その時はその時で、嫌われたって構わない。
この電子の世界なら、いくらでも代わりは見つかる。

趣味や、好きな音楽を合わせたり、
相談に乗ったり、愚痴を聞いたり、
理解ある誰かを演じるのは、すごく簡単で、
きっと精巧にプログラムすれば、
ロボットだって、代わりはできるんじゃないかな。

か弱い僕らは、恋をする。
傷つかないよう電子の世界で、恋をする。
まだ見ぬ君に、恋をする。



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