Short Story…





Short Story No 147
サイレン



サイレンが聞こえる。

僕の目の前を、救急車が走っていく。
どこかで事故があったのか、
どこかで誰かが、病に倒れているのか、
どこかで事件が起こったか。

僕の知らないどこかへ、救急車は向かっていく。
助けを求める誰かの元へ、救急車は向かっていく。

救急車を呼んだ誰かは、すごく苦しんでいるんだろう。
救急車を呼んだ家族は、きっと不安を感じていることだろう。
救急車を呼んだ被害者と面識のない誰かですら、きっと心配してる。

サイレンの音を心待ちにし、一分でも一秒でも早くその音が、
聞こえてくるようにと祈っているんだろう。
事故現場や、家や、街のどこかで。

時に、どうでもいい些細な怪我や症状で、
救急車を呼ぶ誰かもいる。
悪戯で救急車を呼びつけ、顛末を楽しむ愉快犯だって大勢。
その誰かは、きっと気付いてないんだろうけれど、
タイミング次第では、人を殺すことにも繋がりかねない。
いや、きっと繋がる。

僕は、何人殺せただろう。

サイレンが通り過ぎていく。
サイレンが小さくなっていく。



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