Short Story…




Short Story No 171
録画



チャンネルを切り替える。
つまらない、つまらない、つまらない。
頬杖のままため息を吐き、次々とチャンネルを変えていく。
今日みたいに暇な日に限って、面白くないやつばかり。

次々とチャンネルを変え、一瞬キスシーンが映った。
慌ててチャンネルを戻す。
誰かは知らないが、男が女の肩に左腕を回し、
ゆっくりと舌を絡ませている。

そういえば、おもしろそうだなと思いながら忘れていた。
危うく見逃すところだった。
急いで録画ボタンを押す。
DVDやブルーレイじゃないのが残念だけど仕方ない。

男は右手で、女の胸を服の上から触り始める。
女は最初こそ左手で、男の手を払おうとしていたが、
もうなすがままに。
男の手は、服の上から服の中に。

おもしろくなりそうだ。
そう思っていた矢先、目の前の電話が鳴った。
とりたくはないが仕事だから仕方ない。
部屋番号を確かめ、受話器をとる。

下手糞な歌声に混じり、女の声。
「すいません、ウーロン茶を3つお願いします」
こっちが返事する前に電話は切れた。

俺は立ち上がり、コップに氷を入れ、
ドリンクを作り始める。



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