Short Story…




Short Story No 180
ひょっとして



「最近、誰かに尾けられてる気がするんだ」

友人に電話でそう打ち明けられた。
彼は温和な性格の男で、これといった心当たりも無いとくれば、
きっと気のせいか彼の自意識過剰だろうと考え、
気にしない方がいいといった助言をし、話は終わった。

しかし、それ以来、彼と連絡が取れない。
心配になり彼の家を訪ねたけれど、誰も出ない。

しばらくして、また彼の家を訪ねると、
ドアの郵便受けに、沢山のチラシが入れられていた。
インターフォンを何度か鳴らしても、やはり誰も出なかった。

また彼の家を訪ねると、郵便受けのチラシはさらに増え、
入りきらなかったチラシが数枚通路に落ちていた。
電気料金を計るメーターも止っており、
もはや人の住んでる気配がない。

不審に思い、マンション入口の看板に記載されていた
管理会社に連絡する。
友人が住んでいる部屋のことを聞くと、
今は、空き部屋のようだとの返事だった。

どうやら引っ越してしまったらしい。
なにも告げずに引っ越してしまうなんて。

本当に尾行されていたのだろうか。
それとも、何かのトラブルに巻き込まれてしまったのだろうか。
ひょっとして、友人だと思ってたのは、自分だけだったのだろうか。



back