Short Story…




Short Story No 182
優越感



後ろ足だけで歩く犬がいた。
二足歩行の犬。
TVで紹介されそうな光景だけに少し驚いた。

その犬を見た二人組みの女の子が、
可愛いと言いながら近づき、写真を撮っている。
本気なのか、友達の手前そう言ってるのか、真実は知らない。

犬を褒められた飼い主は満足そうに笑う。
この芸を仕込むのは、すごく大変だったと得意気な顔。
これって芸なんだろうか。

きっと優越感がそうさせる。
誰かが持っていない物を持ってるだとか、
誰かができないことができるとかそんな優越感。

トリミングも、服を着せるのも、
なんとも思わないけれど、後ろ足だけで歩くということには、
少し違和感を感じた。

自分なら逆立ちして暮らしたいと思わないし、
四つん這いで生活するのもごめんだ。
でも、そうしないと生きていけないのならきっとやるんだろう。
どんな気持ちだろう。
その時の自分は。
あの飼い犬は。

優越感に浸る飼い主と、女の子の傍を、
別の飼い主が大型犬を連れ通り過ぎる。

器用に後ろ足だけで立つ犬を感心し物珍しげに見る飼い主の隣で、
大型犬はきっと、優越感に浸っているんだろう。



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