Short Story…




Short Story No 185
急に、猫が



衝撃が車体を揺らす。
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

スピードはさほど出していなかったが、
あまりにも突然で、よける暇もなく、
ブレーキーも間に合わなかった。

男はその猫をひいた。

男は、そのまま車を停車させようとしたが、
怒りと恐怖、また、関わり合いになりたくないという思いから、
車を急発進させた。
事故の現場がみるみる遠ざかっていく。

ルームミラーで確認すると、
遠くで飼い主だと思われる男が、猫を抱きかかえているのが見えた。
猫に対し申し訳ない気持ちはあったが、
あの飼い主に、走って追いかけてられてはたまらないと、
アクセルを踏み込みスピードを上げその場を離れた。
しばらく運転を続け、路肩に車を止めた。
ミラーにもう誰の姿も映っていないのを確認し、
男は、ようやく安堵のため息をつく。
足が震えていた。

男は考える。
もしこれが子供だったら。
そう考えると恐ろしかったが、
さすがに子供を車に投げつける奴はいないだろう。
いや、もしかしたら。

事故の間際、一瞬見えた飼い主の顔、動作。

あの飼い主の男、
まるでボールを、投げるみたいに。



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