Short Story…




Short Story No 195
お前か?



その日、人身事故と、殺人事件があった。
場所は駅。死傷者は10数名。
床には、夥しい量の血痕。
犯人は、持っていたナイフで、
「お前か?」
そう喚きながら、次々と人を刺した。

待ち合わせ場所の駅に着いた時、辺りは騒然としていた。
目の前のロータリーには、救急車とパトカーが何台も停まっている。
数人の警察官が、現場で何かを話し誰彼に話を聞いている。
救急隊員は、誰かをストレッチャーに乗せ救急車へ運ぶ。
その近くには、泣いている女、頬をタオルで押さえ座り込んでいる男。
そのタオルは、真っ赤に染まっている。

その日、仕事が終わるのが遅れたせいで、
待ち合わせの時刻よりも少し遅れて待ち合わせ場所に着いた。
もし、遅れてなかったら、どうなっていただろう。
そう考えると、少しだけ恐ろしくなる。
そして、腑に落ちないことも。

その時間に、僕をこの場所に呼び出した彼女だ。
その日彼女が乗った列車は、人身事故のせいで遅れていた。
1つ隣の駅で、誰かが列車に飛び込んだらしく、
列車はすでに1時間近く付近の駅で立ち往生していた。

どうして、何も連絡しなかったのだろう?
遅れると連絡を受けていれば、待つことも、
こんな事件に遭遇する可能性もなかったのに。

しばらくして、ようやく電車が到着し、
彼女は、不機嫌そうに僕を見つめる。
それが、電車が遅れたことによるものか、別の理由なのかわからない。

犯人の名前を、次の日のニュースで知った。
キャスターの告げる犯人の名前は、
どこかで聞いたことのある名前だった。
たしか、彼女の元彼の。



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