Short Story…




Short Story No 205
柔らかなクッキー



料理が得意だと自負するあの子。
最近はまっているのはお菓子作り。

レシピなんて見ようともしない。
感覚と勘だけで材料を選び、
適当に混ぜて、形を作りオーブンで焼き上げる。

最初にできたのは、煎餅のように固いクッキー。
食感も悪くあの子も納得しなかった。
何度も挑戦し、市販のものと遜色ないものができた。
満面の笑み。

でもあの子が作りたいのは、
柔らかい食感のしっとりとしたクッキー。

当然のように失敗。
なかなかうまくはいかない。
今は、あれこれ試行錯誤の真っ只中。

「ちょっと味見してくれる?」

珍しい誘いの言葉。
いつもは自分が納得したものしか出さないのに。

すごく甘ったるい匂い。
その匂いとは裏腹に、少し苦い。
なんだか柔軟材の香りに似てる気がするのは、
僕の気のせいだろうか。。



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