Short Story…




Short Story No 207
正体



まただ。
背後に視線を感じる。
気のせいじゃないし、正体はわかっている。
前に一度、顔を見た。
暗がりの中見えたのは父の顔だった。

父は、やたらと干渉する人だった。
外出しようとすればいつも何時に帰るのかと聞き、
私が帰ってくるまでずっと起きて待っている。
たとえ眠っていてもドアの鍵を開ける音で目を覚まし、
今何時だと思っているんだと私を責めた。

娘を自分の所有物と勘違いしている。
それだけじゃ飽き足らず、挙句尾行まで。
父は、私を監視している。

最低だ。

うちは父子家庭だから、父を避けることはしたくなかったけど、
視線の正体に気付いた時から父と話さなくなった。

ずっと我慢してきたけれど
無視するのは私にとってもストレスで、
この際玄関で待ち伏せてやろう。
今まで溜め込んでいた怒りを吐き出してやろうと思った。

まだ視線を感じる。
急いでバックから鍵を取り出し家に入り、
ドアを閉め鍵をかける。
父はどんな顔をするだろう。

一旦荷物を置こうと自分の部屋へ向かう途中、
リビングで倒れている父を見つけた。

鍵を開ける音がした。。
玄関のドアが開く音も、聞こえた。

私は振り返る
父に似た顔の男が、笑顔で立っていた。



back