Short Story…




Short Story No 228
歯ブラシ


洗面台の前にたった。
洗面台には歯ブラシ数本と歯磨き粉以外何もない。

歯を磨こうと歯ブラシを手にした。
少なくなった歯磨き粉のチューブ。
搾り出すように歯ブラシにつけた。
その歯ブラシを口に近づける。

妙な臭いがした。
不快な臭い。

歯ブラシを顔から離す。
よく観察すると、歯ブラシは濡れていた。
きっと間違えて使われたのだろう。

またか。

強い不快感。
きっと祖父だろう。
どうしてこう何度も間違えるのか。
家族とはいえ、自分の歯ブラシを使われるのは不快だ。
間違えられないようグリップにはテープを幾重にも巻いているというのに。

歯ブラシを捨て部屋に戻り、
外泊用の携帯歯ブラシを取り出し、
また歯ブラシに歯磨き粉をつける。
歯ブラシに水をつけ、丁寧に歯を磨いた。

歯磨きを終え、口をゆすぐ。

仕方ない。
ため息をついた。
そうだ仕方ない。
このくらい大したことじゃない。
この前みたいに剃刀で歯を磨かれるよりはマシだ。




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