Short Story…




Short Story No 256
刷り込み



「あぁ、俺も愛してるよ、おやすみ」

「気持ち悪いよ、何?自慢してんの?」
「違うって、そういうわけじゃねーよ」
「友達と一緒なんだからさ、後でかけなおしてその時に言えよ」
「あーそうだな、ごめん」
「車の中だからしょうがないのはわかるけど」
「悪いな、あいつ、電話に出ないと怒るんだよ」
「でもさ、そういうもんなの?いつも電話切る時愛してるとか言ってんの?」
「あぁ、まあ。でも仕方ないんじゃん」
「なんで?」
「愛してるよって言われるだろ?そしたら」
「いやいやいや、うん、俺も。とかでいいじゃん」
「いや、最初はそうだったんだけどさ、愛してるって言ってって言われてさ」
「あぁ、なるほどね、いるよねそういう子」
「はぁ?だりいとか思ったけど、しぶしぶ言うようになったわけ」
「わかるけど、一応人の前だしさ」
「いや、ごめんって」
「ん、でもそんなに好きなの?」
「いや、最初は全然興味なかったっていうか遊びのつもりだったんだけど」
「本気になった、と」
「そうなのかな」
「そうなんじゃないの。それで、かわいいの?」
「全然。顔とかタイプじゃないし、付き合った時はそんなに好きでもなかったけど」
「でも今は愛してる、と」
「そうだなぁ、情がわいたのかな」
「情ねぇ」
「なぁ、これ、あいつに言うなよ」
「言うなよって言われても会ったこともないし言えないって」
「さっきはそんなに好きでもなかったって言ったけど、ぶっちゃけると嫌いだった」
「じゃあ付き合うなよ」
「本当はすぐ別れるつもりだったんだ」
「まぁ、そうなるよな」
「性格が合わないってのもあったし、趣味も合わないし」
「そのくらいよくあることだと思うけど」
「許せない部分ってのも結構あった気がするんだけどな」
「慣れたんじゃないの、きっと」
「いや、死ねとか普通に思ったりもしてたんだけど」
「お前ねぇ」
「不思議だよな、でも今は愛してるような気がするんだ」




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