Short Story…




Short Story No 260
危ない奴



振り返ると、危ない奴がいた。
小型の自転車に乗っている。
携帯電話の青白いライトがそいつの顔を照らす。
明るめの巻き髪。
目つきはわからない。
サングラスで隠れているから。

ハンドルの両脇には鞄とショップの紙袋。
耳には大き目のピアスとイヤフォン。
少し距離があるにもかかわらずシャカシャカと音が聞こえる。

細い煙草を口にくわえ気だるそうに煙を吐き出しながら、
ペダルを漕ぎ、交差点を止まらずにそのまま突っ切っていった。
信号は赤、危うく車にぶつかりそうになる。
クラクションが鳴らなかったからか、
そいつは何事無かったようにそのままどこかに行ってしまった。
事故に遭いそうになったことにも気付いていないみたいだった。
運が悪ければ死んでいたかもしれないのに。
もしかしたら死んだって気付かないかもしれない。
別にいいんだ、そいつが死ぬ分には。
関係ないし、知ったことじゃない。

でも、そいつも車の免許くらい持ってるだろうし、
車に乗ったりすることもあるだろ、きっと。




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