Short Story…




Short Story No 268
夢のような



付き合わない?

男からごく自然に、さらりと言われた。
指定された店の名前を聞いた時に、
なんとなくそんな感じはしてた。

平静を装った男の横顔。
その頬は薄く赤みを帯び、
その赤さが恥ずかしさからからくるものか、
お酒のせいなのか女にはわからない。

言葉を告げてから、男の視線はずっと目の前のグラスに向けられている。
自信の無さの表れかもしれない。
実際男の声はか細く、落ち着いたこの店でなければ、
周囲の喧騒に掻き消されてしまいそうだった。
この告白もアルコールの力を借りて
必死で振り絞った言葉なのだろう。

内気であまり社交的とはいえない男。
この告白にどれほどの勇気が要ったことだろう。

実直で誠実そうな瞳。
返事を待つその瞳を一瞥し、女は夢のようだと思った。
まるで悪夢のようだと。






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