Short Story…




Short Story No 289
野良猫



彼のコートに白い毛がついていた。
コートの素材のせいか、埃の類は付着しやすい。
本数はそこまで多くはないけど、あちこちに散らばっている。
コートの色は黒だったから、その白い毛は余計に目立っていた。

その白い毛はどうやら猫の毛らしい。
野良猫と遊んでる時についたんじゃないかな。
彼はそんなことを言いながら、コートについた白い毛を
粘着式のカーペットクリーナーでコロコロと取り除いていく。

野良猫に餌をあげることはあると思う。
でも、その猫を抱きかかえたりするのかな?
それに、コートの裏地にまで猫の毛ってつかないんじゃない?

コートを脱ぐ機会でもない限り。

きっと、野良猫じゃないんだろう。
それなら見つけるのはそんなに難しいことじゃない。
でも、その猫を見つけたらどうしたらいい?


そうだ。キャットフードを食べさせてやろう。
それがどんな猫でも、どこかの泥棒猫でも。





back